ぐずぐずにっき

日々の事を徒然と。

トキワ荘の青春

神保町シアターで「トキワ荘の青春」を観てきた。

トキワ荘での出来事が、本木雅弘演じるテラさん(寺田ヒロオ)目線で、ゆったりと静かに表現されていたのが印象的。その証拠に、終盤でイビキがちらほら聞こえてきた…(笑)。つまらないから寝てしまうわけではなく、観ていてとてもリラックスできる映画なんだと思う。一方でテラさんの、彼が描きたい漫画と変わっていく漫画の世界や世間とのニーズに悩む感情も相まってか、どことなく寂しい気持ちにもなる。石ノ森章太郎が漫画で描いたトキワ荘像に似ている。もうこの世界は無くなってしまったんだ、という現実を突きつけられたような虚無感。でも寂しくなり過ぎず、ゆるやかな空気で時折笑える場面も交えながら観られるので心地よい。
いいな、と思ったのが、トキワ荘に住む漫画家達がテラさんの部屋に集まって酒盛りするシーン。藤子不二雄Aの「まんが道」にもよく出てきたので個人的に馴染み深いシーンだった。みんな静かに、でも自らの軸を持ち漫画について語り合う。そこにはお互い嫉妬し合い喧嘩するなどということはない。その証拠に藤子不二雄Aもこう語っている。
他の人が先に売れても嫉妬を感じるどころか、こっちも頑張ろうと思ったり。本当の同志の集まりでした。
一つ、気が付いたことがある。テラさんと酒盛りしていた漫画家達は、「無駄なエネルギーは使わない人」だったのではないかと。人を妬んで喧嘩するくらいならそのエネルギーを漫画にぶつけよう、ということだ。実際のところはそりゃ人間だもの、嫉妬を全く感じなかったかと言われたら嘘になると思うがそれをきちんとコントロールして向かうべきところへのエネルギーに変換させることができていたのだろう。この映画には自分が今何をすべきで何にエネルギーを使うべきなのか、それを見失わないヒントが隠されている。